第32章 本当に太陽が西から昇ったようだ

「な、何するの?!」

 莉緒は完全にパニックになり、手がもつれたまま服をかき集めて胸元をかき抱いた。

「吉野結人、今日どうかしてるの?!」

 あの“若様”が、人の体を洗うだなんて。

「おまえ、潔癖なくせに」

 吉野結人は手を止めない。口ぶりは妙に当然で、腹が立つほど落ち着いていた。

「寝る前に風呂くらい入るのが普通だろ?」

「自分で入る! 出てって!」

 莉緒は襟元を死守したまま、彼の胸を押して追い出そうとする。

「出ていってやる」

 吉野結人はようやく動きを止めた。けれど――彼女の腰紐を掴んだ指だけは離さない。

「ただし条件がある。ちゃんと洗って、洗ったらベッドで寝る...

ログインして続きを読む