第36章 男に節約させて何の役に立つのか

 川崎綾人は彼女の微かな揺らぎを察し、間合いよく話題をすり替えた。

「安藤社長。莉緒さんもいらっしゃいますし、よろしければ今回のショーの会場デザイン案、彼女にも一度見てもらえませんか。ファッションの勘が鋭いので、いい意見が出るかもしれません」

 安藤社長は頷く。

「いいですね」

 川崎綾人がタブレットを莉緒へ差し出す。画面には発表会全体の設計プランが表示されていた。

 莉緒は胸の内をいったん畳み、静かに集中して目を走らせる。

「……ここ」

 数分後、彼女はランウェイの図面の一点を指で示した。

「曲がり角の角度がきつすぎます。ロングドレスやハイヒールだと裾を踏んだり、足首を捻っ...

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