第43章 心が痛むのはあなたの妻だけだ

 吉野結人は一瞬、言葉を失い、反射的に言い返した。

「どうして見えてないって言うんだ? わかってる。理解してるよ。……この数年、おまえは俺の代わりにこの家を守って、家のことも全部やってくれた。楽じゃなかっただろ。俺だって人の心はある。おまえがつらいなら、俺もつらい」

「……もういいわ、吉野結人。そんな言葉、信じられない」

 莉緒が静かに遮った。

 彼女は手を上げ、指先でそっと彼の胸元――心臓のあたりに触れる。

「あなたが『かわいそう』って思ってるのは、奥さんという立場よ。その役割、その責任、その体面。……でも、莉緒のことをかわいそうだと思ったことはある? 何度も誤解されて、無視され...

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