第68章 いっそ体外受精をやってみようか

莉緒は粗末な流し台にしがみつくように身を伏せ、ひどく吐いていた。喉の奥から込み上げるものを何度も何度も吐き出し、そのたびに額の青筋が浮き上がる。

 小さな顔は紙のように白い。額にはびっしょりと冷や汗がにじみ、全身の力が抜けきって、今にもその場に崩れ落ちそうだった。

 安藤里穂は出産を経験した身だ。一目見ただけで、これはおかしいとわかった。

 つわりがつらいのは珍しくない。けれど、ここまで激しいのは普通ではない。

 医者から聞いたことがある。重ければ母体の命に関わることもあり、妊婦の安全を優先して妊娠の継続を断念するよう勧める医師さえいるのだと。

 安藤里穂は莉緒の背をさすりながら支...

ログインして続きを読む