第9章 彼女は妊娠していない

吉野結人は、その場で凍りついた。

静寂を切り裂いたのは早川渚の悲鳴だった。

「莉緒!」

小林莉那も口元を押さえ、顔面蒼白になる。

――血……多すぎる。

まさか、莉緒は……。

吉野結人の頭は真っ白になった。痛みに身を丸めてうずくまる莉緒を見た途端、胸の奥がひやりと冷え、足がもつれるように駆け寄る。

「莉緒! お、おまえ……!」

「先生……わたしの……」

莉緒は意識が遠のき、かすれた声でうわ言みたいに呟いた。

「莉緒! しっかりして!」

早川渚が飛びつくように傍へ膝をつき、抱き起こそうとして――けれど、怖くて手が止まる。

止まらない出血。

視界がぐらりと揺れて、涙が一気...

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