第100章 彼のことがとても好きなんだろう

平山亜美の視点:

  「えっ……!」

  思わず声が漏れて、ばっと振り向いた。

  いつの間にか、母が私の部屋のドア口に立っていた。ドア枠にもたれかかって、からかうような笑みを浮かべている。

  机の上のデジタル時計に目をやる。夜10時を、とっくに回っていた。

  呆然として、膝の上に広げたスケッチブックを見下ろし、それから窓の外の、溶けるみたいに濃い夜を見た。

  ……私、ここで何時間も座りっぱなしだったんだ。

  「もう、お母さん!」

  私は拗ねた声を出し、反射的に画板を胸に抱え込む。頬がまた熱くなる。

  「いつ帰ってきたの? 歩く音、全然しなかったんだけど」

 ...

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