第149章 ゆっくり受け入れていけ

平山亜美の視点:

  海峡大橋のたもと。突き当たりに立つ標識の、アルファベットで綴られた地名はあまりにも見慣れているはずなのに――いま目に映るそれは、分厚い水の膜越しみたいに滲んで、どうしても焦点が合わなかった。

  心臓が勝手に暴れ出す。どくん、どくん、と胸郭を叩きつけられて、胸の奥が重く詰まる。

  額の端から冷たい汗がにじみ、こめかみを伝って落ちていく。手の甲で拭うと、ひやりと湿っていた。

  「亜美?」

  隣で林原莉子がそっと私の手を握る。

  「大丈夫?」

  口を開いた。「平気」と言いたいのに、声が出ない。

  息を吸おうとして、途中で胸がきゅっと締まった。吸い...

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