第154章 彼女はレイプされたかもしれない

平山亜美の視点

 お婆さんが小走りで戻ってきて、地面に落ちたノートを拾い上げる。ぱたん、と閉じてから、そっと私の手のひらへ戻した。

 そのまま手を引かれ、私は木のベンチに座り直す。

 お婆さんも隣に腰を下ろし、私の手の甲をぽんぽんと叩いた。長い、長い溜息。

「亜美、聞いておくれ」

 声が、急にしゃがれた。

「私はね、児童養護施設で……ほとんど一生、台所にいたんだよ。ずっと前の棟で働いててさ。裏庭で何が起きてるかなんて、知りようがなかった。施設長は私らを近づけさせなかったんだ。『奥の棟はもう使ってない。古くて危ないから入るな』って、それだけ言って」

「でもね、夜……夜に施設に残っ...

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