第32章 彼女を放せ、私が人質になる

宮下駿介の視点

「書類は遅くとも明日の15時までに、上に上げてくれ」

オフィスビルを足早に出ながら、後ろをついてくる秘書に指示を飛ばす。

「承知しました、局長。すぐ手配いたします」

秘書は一度言葉を切って、少し迷ったように口を開いた。

「局長、お送りいたしましょうか」

「いや。家には帰らない」

短く言い捨てて、歩みは止めない。

平山亜美は高熱からようやく回復したばかりだ。休めと言っておいた。だが、どうしても落ち着かない。

「局長。可能でしたら、至急ご帰宅になるか、いっそ部へお戻りください。しばらくは……外で足を止めないほうが」

秘書が追いすがってくる。

足を止めた。

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