第72章 君が心配だ

平山亜美の視点:

 足が、ぴたりと止まった。体の芯まで固まって、息の仕方すら忘れる。

 ――やばい。見つかった。

 反射的にスマホを握り締める。掌はじっとり汗で濡れていた。

 頭の中で、考えが弾けるように駆け巡る。

 彼女に見られた? 顔を覚えられた? 誰かを呼んでスマホを奪われる? 今ならまだ逃げ――

 でも、足首に残る鈍い痛みが現実を突きつけた。速くは走れない。学年主任と一緒に追われたら、まず逃げ切れない。

 そのとき。

 横合いから、ふいに手が伸びてきた。

 ぐいっと引かれて体が傾く。声を上げる間もなく、大きなつばのサンハットが頭に被せられた。つばが深く落ち、顔の半分...

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