第75章 あなたに説教されたくない

平山亜美の視点

  その手は大きく、指は長い。指先には薄いタコがある。

  松の木みたいな匂いが背後からふわりと覆いかぶさってきて、誰なのかなんて考えるまでもなかった。

  それでも心臓は、勝手に一拍だけ跳ね損ねる。

「宮下駿介……?」

  探るように呼ぶと、手が離れた。

  ぱちりと瞬きをして、急に戻ってきた光に目を慣らしながら振り返る。

  彼はすぐ後ろにいた。近い。息が触れそうな距離。

「邪魔した」

  彼は私を見ない。視線は私の肩越しに抜けて、小島倫太郎へ軽く顎を引いた。

  それから、ようやく私の顔へ視線が戻る。なのに言葉は小島倫太郎に向けられたままだった。

...

ログインして続きを読む