第140章 あなたが行かないなら、私が行く

相馬万珠の名は出さなかった。結城永司の意向だ。

望月朝夜は小さくうなずき、まだ掠れた声で言った。

「私のものは?」

「……と、おっしゃいますと」

「研究室に置いてある、銀色のUSBメモリ」

そこには、彼女の心血がすべて詰まっている。

助手の顔に一瞬、困惑が走る。

「結城社長からお達しがありまして……マンションのほうは封鎖中です。しばらくは――」

「返して」

望月朝夜が遮った。視線が冷え切る。

「それは、私のもの」

「望月嬢、社長もあなたの安全を――」

望月朝夜はそれ以上、言い合う気はなかった。

布団を跳ね上げ、ベッドから降りようとする。

言葉を重ねても無駄だ。決め...

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