第157章 間に合わない

「七時半」

それ以上、彼は訊かなかった。

秘書も、それ以上は口を開かなかった。

午後の会議は18時40分まで続き、最後の議題は結城グループ医薬部門の年間予算承認だった。

結城永司がふいに言った。

「今日はここまで」

会議室の空気が、ほんの一拍止まる。

結城社長は、いつも最後まで座っている。途中で散会など、この三年で初めてだった。

財務部長が続きを話そうとしたが、隣の人間に袖を引かれて口をつぐむ。

結城永司はファイルを閉じ、立ち上がって部屋を出た。

――彼女の論文は通った。契約も結んだ。

何か言うべきだ。

たとえ「おめでとう」の一言でも。

だが、それだけでは軽すぎる気...

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