第169章 万が一に備えて

林田修は袖口の中で拳を一度きゅっと握り、すぐにほどいた。

「つまり、俺に会うと彼女は緊張するってことか? じゃあお前が毎日廊下に突っ立ってたら、胎児の心拍データはどうなるんだよ」

結城永司は答えない。

「結城永司」

林田修が一歩踏み出す。二人の距離が一メートルもないところまで詰まった。

「俺は友だちに会いに来ただけだ。お前に止める資格がどこにある?」

「……彼女は、俺の妻だ」

早口ではない。ひとつひとつの言葉が、やけに明瞭だった。

「この病室のことは全部、俺が手配する。治療方針、手術の同意書、術後のケア……」

視線が林田修の顔に落ちる。

「そういうことに、部外者が口を出す...

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