第28章 恩知らず

一片の灰が、彼の高価なスラックスに落ちた。

それでも結城永司は気づきもしない。

脳裏に残っているのは、ただひとつ――「林田修が彼女を連れていった」という報せだけだった。

また林田修。

自分が火の車で、家の中までぐちゃぐちゃになっているというのに、あの女は幼なじみと一緒にいる。

永司は煙草を揉み消し、スマホを掴むと、歯を食いしばったまま吐き捨てた。

「洗え。あの録音――誰が流した。徹底的にだ」

望月朝夜が、まだどれだけ自分の知らない顔を隠しているのか。とことん見せてもらうつもりだった。

   ◇

林田修は、望月朝夜を自分名義の空きマンションへ移した。閑静な立地で、警備も固い。...

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