第30章 三年もの間得られなかったもの

 どうして彼は、あの女の気持ちまで考えたのだろう。

 長年染みついた習慣のせいか。それとも――潜在意識のどこかで、まだ決定的に突き放し切りたくなかったのか。

 彼は自分に言い聞かせるように理由を並べた。

「君はいま妊娠してる。俺は家にいる時間も少ない。万が一、彼女が戻ってきて君を見たら……君と子どもに何かするかもしれない」

 相馬万珠の顔色が、さっと抜けた。

 瞳に灯っていた光が、少しずつ沈んでいく。

 彼女は結城永司の手をそっと離し、身を縮めるように一歩引いた。

「ごめんなさい……あそこは朝夜さんのおうちなのに、私がそんな無理を言うべきじゃなかった」

 俯いた肩が、かすかに...

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