第85章 こんなにあっさり彼女を行かせたのか?

相馬万珠は結城永司の姿を認めた瞬間、堰を切ったように涙をこぼした。

「子どもが……っ、痛い……! 望月朝夜に突き飛ばされたの! あの女、私の子を殺そうとした!」

泣き声は甲高く、ほとんど錯乱に近い。

結城永司の視線は相馬万珠を越え、数歩先に立つ望月朝夜へ落ちた。

彼女は無表情だった。

永司を見つめながら、胸の奥が痺れて、鈍っていく。痛みすら感じない。

――信じるの?

結城永司にとって自分は、目的のためなら手段を選ばない、性悪な女でしかないのだろう。

「私は、突き飛ばしてない」

望月朝夜はそう言って、淡々と弁明した。

その一言を聞いた途端、相馬万珠はさらに激しく泣き喚く。

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