第9章 結城永司だからこそ騙される

だが、その手首は宙で掴まれた。

止めたのは結城永司だった。

その場にいた全員が、息を呑む。

相馬万珠の表情がぴくりと固まり、周防雅姫は驚きと怒りをない交ぜに叫んだ。

「結城社長、どういうおつもり?」

結城永司は彼女を見もしない。視線は終始、望月朝夜の顔に貼りついたままだった。

自分でも、なぜ手が出たのか分からない。

ただ――この女は、たとえ不要になったとしても、他人が好き勝手に触れていいものじゃない。

「俺は……」

そう言いかけた瞬間、背後でエレベーターが開き、澄んだのに切羽詰まった声が飛び込んできた。

「朝夜!」

林田修が駆け込んでくる。望月朝夜が人垣の中心で小さく立...

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