第百五章

百合子がティーカップをローテーブルに叩きつけるように置くと、熱いお茶が跳ね、磨き上げられたマホガニーの天板にどす黒い染みを広げた。

床にへたり込む雪菜を射抜く視線は、氷のように冷たい。

「答えなさい。夜中に眠りもせず、塀を乗り越えてどこへ逃げるつもりだったの」

雪菜は全身を小刻みに震わせた。顔を上げるとすでに涙まみれで、乱れた髪が頬に張り付いている。その姿はひどく惨めで、哀れを誘うものだった。

彼女はしゃくり上げ、泣きじゃくりながら声を絞り出す。

「百合子様、わざと逃げようとしたわけじゃありません。ただ……ただ、怖かったんです。ここの部屋は暗くて狭くて……一人ぼっちで、夜も眠れなく...

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