第108章

言い終えるなり、和也は身を翻して足早にダイニングを出た。上着と車のキーを手に取り、そそくさと邸宅を後にする。

葵はダイニングテーブルのそばに座ったまま、キスされた額にそっと触れた。心臓はまだ早鐘を打っている。

テーブルに残されたグラス半分のミルクを見つめ、無意識のうちに口元へ浅い笑みが浮かんでいた。

そのとき、彼女のスマートフォンが鳴った。

梨乃からの着信だった。

葵は電話に出る。

「もしもし、梨乃」

「葵、大丈夫? 昨日私が帰った後、和也に何かされなかった?」

電話の向こうから、梨乃の心配そうな声が聞こえてくる。

「大丈夫よ。何もされてないから」

葵は静かな声で答えた。...

ログインして続きを読む