第109章

空気が一瞬にして凍りついた。

葵は彼をじっと見つめ、しばらくして、ふっと笑いを漏らした。

ただし、その笑みには色濃い嘲笑だけが滲んでいた。

「いいわよ」

彼女はあっさりと口にした。

「ここはあなたの家だもの。誰を住まわせようとあなたの自由。私に異論はないわ」

言い捨てて立ち上がり、ソファに置かれたバッグを手に取って二階へ向かおうとする。

「どこへ行くんだ?」

和也は弾かれたように立ち上がり、足早に歩み寄って彼女の手首を強く掴んだ。

その力は強く、葵の手首にじんじんと痛みが走る。

「私がどこへ行こうと、あなたに関係ある?」

葵は腕を強く振り払おうとしながら、冷え切った声で...

ログインして続きを読む