第110章

まもなく、二人は正美の家に着いた。

「今日はもう遅い。ここで一晩泊まって、明日の朝一番で霊園に行こう」と正美が言った。

葵は黙って頷いた。

しばらくして、彼女はふと顔を上げ、正美を見た。

「先輩、少し飲みにいきたいです」

正美は眉をひそめる。

「葵、あまり飲まない方がいい。体に障るし、明日はお墓参りがあるんだから」

「ほんの少しだけ」

葵の声にはすがるような響きがあった。

「胸が苦しくて……お酒で少し、発散させたくて」

赤く腫れた彼女の目元を見て、正美はとうとう折れた。

「……分かった。少しだけだぞ」

二人は正美の家の近くにある小さな居酒屋へ向かった。

店内は客も少...

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