第百四十三章

翌朝。市役所の正面玄関が開くと同時、葵はすでにそこに立っていた。

手には書類の入った封筒を握りしめ、その顔に余分な感情は一切浮かんでいない。

和也が車のドアを押し開け、足早に降りてくる。その顔色は以前にも増して憔悴しきっていた。

掌に二つの結婚指輪をきつく握り込み、葵へ向ける視線には微かな哀願の色が混じっている。

やはり、離婚などしたくない。

だが、葵の表情を見れば分かる。その言葉だけは口にしてはならないのだと。

もし今日、離婚しないなどと言い出せば、今後二度と彼女から信用されることはなくなるだろう。

和也の顔に深い悲愴が浮かぶ。

どうしようもない。すべては自分が犯した過ちの...

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