第16話

雪菜は和也の唇に残る噛み跡をじっと見つめていた。

彼、葵と寝たの?

男から葵が連れ去られたと電話があった時点で、嫌な予感はしていた。

さっき、和也は本当にあのクズのところへ行ったの?

それとも、もう二人は寝たの?

「和也、どうして怪我してるの?」

雪菜は目を潤ませ、その傷に触れようと手を伸ばす。

和也は無意識に後ずさり、その手を避けた。

彼はうつむき加減で言った。

「少しぶつけただけだ」

嘘だ!

雪菜は唇をきつく噛み締め、喉まで出かかった罵倒を押し殺した。

傷の手当てを終え、和也はようやく顔を上げた。

雪菜はすがるような、悲しげな瞳で和也を見つめる。

「和也……葵...

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