第百六十章

褒めちぎられた梨乃は照れくさそうに頭を掻き、何か言おうとしたところを、葵にそっと手の甲を叩かれた。

「お祖母様、少しお話ししていてください。二階に忘れ物を取りに行ってきます。すぐ戻りますから」と葵が口を挟む。

百合子はすぐに頷いた。

「ええ、行っておいで。慌てなくていいから、足元に気をつけてね」

葵が返事をして二階へ上がると、リビングには百合子と梨乃の二人だけが残された。

数秒ほど静寂が落ちる。百合子は手にしていた数珠を置き、梨乃へ顔を向けた。その表情から笑みが少し引き、代わりに真摯な懇願の色が浮かぶ。

「梨乃さん」

百合子は小さくため息をつき、梨乃の手の甲を優しく叩いた。その...

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