第19話

そのとき、執事がタイミングよく扉の前に姿を見せ、にこやかに二人を見やった。

「大奥様が中へとお呼びでございます」

和也は視線を外し、その瞳をすっと冷ややかに細めた。

「行くぞ」

藤原家の本邸は山の中腹に位置し、息を呑むほど豪奢な造りだった。

先代が巨万の富を投じて建てた代物である。

百合子の住まう離れに着くと、葵はうつむき、できるだけ自分の気配を消そうとした。

だが、足を踏み入れた途端、すぐに百合子の目に留まった。

「葵、こっちへいらっしゃい」

その優しい声に、葵はたまらず目頭を熱くした。

この藤原家で、自分を心から気遣ってくれるのは百合子だけだ。他の人間は皆、葵のことを...

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