第50章

大毅は雪菜をなだめようと手を伸ばしかけ、またそっと引っ込めた。

「雪菜、落ち着け。ここは程家の屋敷だぞ。騒ぎを起こして他の連中に気づかれたら、君のためにならない」

声をひどく押し殺し、そこには他人が気づかないほどの甘い響きが混じっていた。

雪菜は弾かれたように一歩後ずさる。

「私のため? 私にどんないいことがあるって言うのよ! 和也の心には葵とかいうあのクズしかいないし、さっきは蓮にも怒鳴られたわ。それに……大毅までよそ者の味方をするなんて!」

泣きじゃくるような声は、甲高く、そしてひび割れていた。

大毅の背後に隠れていた春香が、ここぞとばかりに顔を覗かせた。目元をほんのりと赤く...

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