第79章

和也はその場に立ち尽くし、怒りに満ちた百合子の目と視線を合わせた。唇をわずかに動かしたものの、結局は何も口にしなかった。

今日のこの状況では、どうあがいても雪菜を引き留めることはできない。それは彼自身が一番よく分かっていた。

百合子の態度は頑なで、付け入る隙など微塵もない。

雪菜は屈強なボディガードたちに両脇を抱えられ、屋敷の玄関まで引きずられていった。

抵抗した拍子にハイヒールが片方脱げ落ち、素足が冷たい床に触れる。髪は狂人のように振り乱され、涙の跡と狼狽えきった表情が顔に張り付いていた。普段の可憐でたおやかな面影など、もはや欠片も残っていない。

ボディガードに抱えられたまま、ま...

ログインして続きを読む