第88章

和也は葵に色目を使う蓮を憎み、彼に向けて微笑む葵を憎んだ。そして何より、葵の中で自分の存在が赤の他人にすら劣っているという事実が許せなかった。

蓮も負けてはいない。以前から和也のことが気に入らなかったのだ。夫という肩書きばかりを振りかざし、葵を傷つけてばかりいる男が、わざわざ乗り込んできて手を上げたのだ。黙って見過ごせるはずがない。

二人はもみ合いになり、周囲のテーブルをいくつもなぎ倒した。怒号と悲鳴が次々と沸き起こる。

誰が通報したのか、数分後には赤色灯を回したパトカーがバーの前に停まり、制服姿の警察官たちが大股で踏み込んできた。

「やめなさい! 警察だ、動くな!」

警察官が鋭い...

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