第90章

葵は唇を乱暴に拭った。まるで、決して洗い落とせない汚物でもこびりついたかのように。

つい先ほど、罰を与えるかのような彼のキスが降ってきた瞬間、葵の体は完全に硬直した。

短い呆然とした時間のあと、全身の骨の髄まで焼き尽くすような怒りがこみ上げてきた。

「狂ってる!」

葵は激しく胸を上下させ、怒りで目元を真っ赤に染めている。

これまでの人生で、こんな屈辱を受けたことなどない。この男は、他の女のために三年間も自分を傷つけ続けてきたくせに、今になってこんな真似をするなんて。

「ああ、狂ってるさ!」

和也が低く笑う。その声にはどす黒い殺気が満ちていた。

彼が一歩にじり寄る。長身のシルエ...

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