第104章

鳴瀬颯真の目が、これほどまでに赤くなったのを見たことがない。瞳の奥には、今にもこぼれそうな涙が浮かんでいる。

星川千奈の心は――結局、その不意打ちのひと言に引っ張られてしまった。

反応する間もなく、鳴瀬颯真の唇がまた奪いにくる。

拒む気配が、抵抗から諦めへとほどけていくのを感じ取ったのだろう。彼のキスは、ゆっくりと、柔らかく、宥めるようなものへ変わっていった。

起き抜けの口内には、まだ清涼なマウスウォッシュの香りが残っている。

否定できない。鳴瀬颯真は、彼のキスの中で彼女を堕とす方法を、いちばんよく知っている。

たった一度の口づけで、感情を幾通りにも塗り替えてしまう男。

彼の執...

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