第107章

鳴瀬颯真の冷えた瞳の奥に、ようやくほんのわずかな揺らぎが宿った。

小林琴音は、その隙を逃さない。

「……結婚しよう、颯真」

「あなたの心にいるのが私じゃないことくらい、分かってる。でも、そんなのどうでもいい。もう一度愛してほしいなんて、望まない」

息を呑み、言葉を継ぐ。

「ただ……ちゃんとした立場がほしいの。堂々と、安心して耀平の子を産みたい。それで、彼が戻ってくるのを待つだけでいい……」

「つまり――前のウェディング写真も、今回の浮気相手騒動も。全部、俺に結婚を迫るための手段だったってことか?」

鳴瀬颯真という男は、冷静すぎるほど冷静で、抜け目がない。見て見ぬふりはしても、見...

ログインして続きを読む