第111章

小林亮が歩み寄り、散らかった床を一瞥する。その視線は、包帯の巻かれた彼女の手首で止まった。

さっき力を入れたせいだろう。白い包帯の上に、じわりと赤が滲んでいる。

床にはガラスの破片が散り、しかも小林琴音は裸足のまま――。

小林亮は化粧台の椅子から彼女を抱き上げ、ベッドへ下ろすと、ナイトテーブルから救急箱を取り出した。手首の包帯をほどき、傷口を確かめる。

「……鳴瀬颯真にそこまで執着するのか。あいつのためなら、自傷でもする?」

瞼を持ち上げた小林亮の目は冷え切っていた。淡々としているのに、どこか歪んだ熱が混じる。まともじゃない、と本能が告げる視線。

「鳴瀬颯真に執着しないなら、あな...

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