第118章

鳴瀬颯真が、星川千奈とこの一日で何をしていたのか――それを桐原卓也に話すはずがなかった。

彼は桐原卓也の問いに答えないまま、踵を返して病室へ戻る。

桐原卓也も、深追いするつもりはない。

だが医者である以上、鳴瀬颯真が黙っていても、何があったかくらい察しはつく。

「颯真」

桐原卓也はため息をつき、鳴瀬颯真を呼び止めた。

白衣のポケットから軟膏のチューブを取り出し、差し出す。

「言わなくても分かる。俺を何だと思ってる」

「人をあそこまでボロボロにするなんて……さっき診たときも、ずっと痛いって言ってた」

鳴瀬颯真の胸の内は、苦さと後悔と、言いようのない感情でぐちゃぐちゃだった。

...

ログインして続きを読む