第122章

星川千奈は、もうこれ以上彼と関わり合うつもりはないのだろう。鳴瀬颯真に対しては、とっくに心が冷え切っていた。

彼女はくるりと背を向けると、背伸びするように手を伸ばし、風見逸央の口元に浮いた青あざをそっと撫でた。胸がきゅっと痛む。

「……ケガしてる。私のために、こんなことしなくてよかったのに」

風見逸央は彼女を見つめ、手を重ねるようにしてその指を握った。声は静かで、やさしい。

「大丈夫。車に戻って薬を塗れば平気だ」

「うん……行こう」

星川千奈は頷くと、鳴瀬颯真のほうを振り返りもしないまま、風見逸央と並んで歩き出した。

背後から、低く押し殺した声が追いかけてくる。

「星川千奈…...

ログインして続きを読む