第130章

鳴瀬颯真は長いこと黙っていた。やがて小林琴音が彼の手を離し、半ば強引に指輪を握らせると、右手を差し出してくる。

彼は結局、彼女に恥をかかせなかった。反り返った薬指の先で一瞬だけ迷い、最後に――中指へ通した。

ほどなくして「鳴瀬颯真が小林琴音のために結婚指輪を購入し、自ら指にはめた」という話がトレンド入りする。

二人の婚約は、ほぼ確定。

とりわけ、小林琴音が実名アカウントであるコメントに「いいね」を押したことで、噂は完全に事実扱いになった。

一方の鳴瀬颯真は、もともと芸能界の人間ではない。ネットの憶測など気にしないし、会社の株価やマーケティングに影響が出ない限り、わざわざ否定して回る...

ログインして続きを読む