第140章

星川千奈は表情をわずかに強張らせ、反射的に足を止めた。エレベーターの扉がいったん閉まり、すぐにまた開く。鳴瀬颯真の姿が、再び視界に入った。

「乗らないのか?」

鳴瀬颯真は開ボタンを押さえたまま、低い声で問いかける。

数秒の沈黙のあと、星川千奈はあえて拒まず、礼儀正しく「ありがとうございます」とだけ言って、足を踏み入れた。

鳴瀬颯真は二歩ほど後ろへ下がる。星川千奈は身を翻し、彼に背を向けた。

鏡面に二人の姿が映る。彼女は降下していく表示を見つめたまま、背中に刺さるような鳴瀬颯真の熱い視線を感じ、乗ってしまったことを少し後悔した。

エレベーター内は異様なほど静かで、聞こえるのは二人の...

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