第143章

桐原卓也がスマホを鳴瀬颯真の目の前に差し出したとき、そこに並ぶコメントの一字一句が、嫌でも視界に焼きついた。

かつての自分は、傲慢なほどに信じていた。世の中の何ひとつとして、俺の心を乱せるものなどない、と。

だが――星川千奈と風見逸央の、あまりにも親しげなツーショット。そこへ群がる他人の言葉。

それを見た瞬間、鳴瀬颯真の胸の奥は、ぐしゃりと掻き乱された。

車がマンションの前で止まる。鳴瀬颯真はドアを押し開けて降りたが、足元がふらつき、まともに立てない。

「危ない!」

英子が慌てて降りて肩を貸そうとする。だが鳴瀬颯真は乱暴に手を振り払った。

「ついてくるな!」

壁に手をつき、よ...

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