第154章

星川千奈はスマホを手にしたまま返信し、口元が勝手にゆるんだ。

「ありがとうございます、市川さん」

『これからは楓牙でいい』

市川楓牙から、間髪入れずに返事が来る。

千奈がスマホをしまうと、運転席の風見逸央がちらりと横目で見て、軽く笑った。

「楓牙?」

「うん。全部準備できたって。あとは私たちが行くだけだってさ」

星川千奈は素直に答えたが、風見逸央の表情が、少しずつ沈んでいくことには気づかなかった。

あの夜、鳴瀬颯真に突きつけられた警告が、ずっと胸の奥に引っかかっている。知紗のこと――いつかは打ち明けなければならない。分かっているのに、恐怖だけが先に立つ。

千奈は彼の落ち着か...

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