第163章

個室は一瞬で水を打ったように静まり返った。誰もが言葉を失い、驚きと戸惑いを隠せないまま、二人を交互に見比べている。

星川千奈はすっと手を上げ、薬指のダイヤの指輪を軽く揺らしてみせた。ふわりと笑う。

「鳴瀬社長、冗談がお上手ですね。私、もう結婚してます。そんな幸運、私には回ってきませんよ」

その一言が、鳴瀬颯真の胸の奥に残っていた最後の希望を、粉々に砕いた。

会食が終わり、星川千奈は化粧室へ向かった。廊下へ出たところで、壁にもたれて電話をしている鳴瀬颯真が目に入る。

足音に気づいた彼が顔を向けた。星川千奈は何も言わず、そのまま通り過ぎる。

彼女の背中が廊下の突き当たりに消えたのを見...

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