第170章

午前十時。J市の高級カフェ。

星川千奈は思いもしなかった。西園寺蒼介が「紹介したい」と言っていた友人が、風見逸央だなんて。

風見逸央もまた、彼女を目にした瞬間だけ、瞳の奥にあからさまな驚きを走らせた。だが次の刹那には、何事もなかったように平静へ戻る。

用心深く、隙を見せない男だ。三年追い求めてきた相手が、ずっと手の届く距離にいたなど――想像すらしていなかったはずなのに。

西園寺蒼介が二人を引き合わせ、互いを紹介している間も、風見逸央は終始淡々としていた。胸の内の波を、寸分の綻びもなく封じ込めて。

星川千奈もまた、過去には触れない。二人とも、西園寺蒼介の前で「旧知の仲」であることを一...

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