第18章

鳴瀬庄司だった。

星川千奈は指先で服の裾をきつく握りしめたまま、ドアノブには触れない。

廊下の向こうで続いていた言い争いは、しばらくして――ふっと静まった。

鳴瀬颯真の命令は、この家では絶対だ。たとえ鳴瀬庄司でも、弟の主寝室へ強引に踏み込むことはできない。

数分後、ドアの下の隙間から、紙切れがするりと差し込まれた。

千奈は歩み寄り、しゃがんでそれを拾う。

小さな付箋には、たった一行。

「君がやったんじゃないと分かってる。身体を大事に」

千奈はそれを握り締めた瞬間、堪えていたものが、前触れもなく落ちた。涙が、ぽたぽたと紙に染みる。

ここでは誰もが「諦めろ」と言うのに――自分の...

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