第232章

星川千奈はそれ以上、深くは訊かなかった。エリの実力なら、もっと条件のいい仕事はいくらでも見つかる。だからこちらから紹介を申し出ることもしない。

スイーツ店を出ると、日は傾きかけていた。西日が容赦なく肌に降り注ぎ、眩しさに一瞬、意識がふわりと遠のく。

鳴瀬颯真が海外へ発つ前日。星川千奈は永太を連れて家を出た。迎えに来たのは黒沢清司だった。

別れ際、鳴瀬颯真は子どもみたいに泣きじゃくった。それでも――彼女の心は、最後まで引き留められなかった。

「ここまでにしよう。別れるって決めたなら、これ以上もつれても意味ないよ」

それが、星川千奈が車に乗り込む直前、鳴瀬颯真へ告げた最後の言葉だった。...

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