第29章

星川千奈は反射的に風見逸央へ視線を投げた。男は何も言わない。

度数の高いカクテルが大きなグラスで三杯。酒に強い人間でも、これを立て続けに飲めば潰れる。

星川千奈は、ようやく掴んだ風見逸央との協業のチャンスに、十全の誠意を持って来ていた。

小さくうなずき、彼の顔から視線を引きはがす。テーブルのグラスへ手を伸ばした。

だが、杯を口元へ運ぼうとした瞬間――大きな手がすっと伸びてきて、彼女の手からグラスを奪った。

風見逸央は目尻に笑みを宿したまま、軽く顎を上げる。ぐいっと一息に飲み干した。

来る前から、すでに相当飲んでいたのだろう。そこへさらに一杯。驚いたように見つめる星川千奈に、彼はた...

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