第55章

「颯真、何考えてるの?」

小林琴音は、鳴瀬颯真のどこかおかしな表情を見て、ぽかんと目を瞬いた。

我に返った鳴瀬颯真が言う。

「別に。夜は冷えるし、地面も冷たい。ちゃんと靴履け」

言い終わるか終わらないかのうちに、英子が車から新品のレディース用スリッパを取り出し、琴音の足元へ置いた。

「小林さん、先にこれをどうぞ」

「ありがとう」

琴音はスリッパを履き、そのまま鳴瀬颯真の腕にそっと絡むようにして、一緒に家の中へ入った。

「妊婦なんだから、自分のことはちゃんと面倒見なきゃ。これから赤ちゃんの世話もあるんだし」

玄関を上がると、琴音はごく自然な動きで、鳴瀬颯真が脱いだ上着を受け取...

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