第60章

鳴瀬颯真の後に続く言葉は、遠ざかっていく足音に溶けて、やがて聞き取れなくなった。

星川千奈は、聞き取れなくてよかったと思った。そもそも、聞き取る気もなかった。

リビングで鳴瀬颯真は通話を続けながら、床まで届く窓の前へ歩いていく。

外は稲妻が空を裂き、雷鳴が腹の底を揺らす。叩きつけるような豪雨。

『颯真、外、雷だよ……パパもママもお兄ちゃんも今夜いないの。ひとりだと、怖い……』

電話の向こうから、小林琴音のか細い声が届く。

鳴瀬颯真は眉をわずかに寄せただけで、返事をしなかった。

『颯真、わかってるでしょ。あのことがあってから、雷とか雨が一番だめなの。目を閉じると、頭の中が血だらけ...

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