第80章

「星川千奈!」

小林琴音は早足で千奈に詰め寄り、腕を振り上げると、そのまま容赦なく頬を打ち抜こうとした。

「いつまで恥知らずなの! 颯真はもうあんたと離婚したでしょ! なんでまだ誘惑するのよ!」

――けれど、予想していた痛みは来ない。

高く振り上げられた琴音の手首が、空中で誰かにがしっと掴まれて止まった。

「颯真……?」

琴音は信じられないものを見る目で、目の前の男を見上げる。

鳴瀬颯真は険しい顔のまま、赤くなった琴音の目を氷のように見据えていた。

その光景に、星川千奈は思わず鼻で笑った。

「何が?」

琴音が噛みつくように問い、視線は颯真と同じく千奈へ落ちる。

自分の男...

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