第81章

「風見さん!」

風見逸央が前へ二歩ほど進んだところで、鳴瀬颯真に呼び止められた。

相変わらず、育ちの良さと冷淡さを纏った顔。今夜の当事者が感じているはずの後ろめたさなど、欠片もない。

「風見さんと千奈は、会った回数だって大してない。知り合ってまだ二か月だろ。まさか……本気で惚れたって言うのか?」

風見逸央は思わず、くっと喉で笑った。振り返り、鳴瀬颯真の疑うような視線を真正面から受け止める。

背丈も体格も似た、同じように整った顔立ちの男同士が、夜の闇の中で向かい合う。

鳴瀬颯真は風見逸央の車内へちらりと目をやり、言い放った。

「見た目は二十代でも、あいつは驚くほど単純だ。女を口説...

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