第82章

西郊外の別荘へ戻ったときには、もう午前3時を回っていた。

村上と鳴瀬颯真が中へ入ると、物音で石川が目を覚ましたらしい。羽織を肩に掛けたまま廊下へ出てきて、二人を迎える。

「若様、こんな時間にどうなさったんです? 明日の朝にお戻りだと……」

石川は台所のほうを指し示し、気を回した。

「お腹、空いてませんか? すぐ夜食を――」

「大丈夫です。石川さんは休んでください」

鳴瀬颯真はそれだけ言うと、村上を連れてそのまま二階の書斎へ上がった。

扉が閉まる。

「……話せ」

鳴瀬颯真は単刀直入だった。

夜の闇に沈む大きな窓の前。背の高い影がじっと立ち、低い声が雨音に溶ける。視線は、窓の...

ログインして続きを読む