第86章

彼女のあの人を使うような態度は、幹部というより――この会社の社長夫人みたいだった。

「すみません、少しよろしいですか」

時間を無駄にしたくなくて、星川千奈は小林琴音と受付のやり取りに割って入った。

「鳴瀬社長にお会いしに来ました。予約しています」

「かしこまりました。少々お待ちください」

受付が端末を操作しているあいだ、小林琴音は脇に立ったまま、黙って千奈を斜めに睨みつけてくる。

千奈は原稿を抱え、彼女に視線をくれてやる気すら起きなかった。

「社長はただいま会議中でして、あと5分ほどで終わる予定です。よろしければ、社長室前でお待ちください」

「はい、ありがとうございます」

...

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